【レビュー】Jimmy Eat World (1994) / Jimmy Eat World
- 妹
- 2021年12月12日
- 読了時間: 4分
■作品
アーティスト:Jimmy Eat World
作品:Jimmy Eat World (1994)
リリースレーベル:Wooden Blue Records

EMOリスナーなら誰でもご存じ、キング・オブ・EMOの称号を持つ Jimmy Eat World。彼らと言えば、Capitol Records のプロモーションの手抜きとは裏腹に今日まで 90's EMO名盤として愛される結果となった Clarity や、あのゲフィン様も創立メンバーである映画配給会社としても有名な Dream Works からリリースした Bleed American 等が有名だ。そのため、Clarity や Bleed American を知っていて、このセルフタイトルの 1st Album を知らないという方が多いと思う。そしてそのような人達が、この作品のサウンドを聴いた時、きっと驚くだろう。
何故ならば、この作品は、EMOとはかけ離れたメロコア、ポップ・パンクアルバムだからである。
NOFX のような2ビートで駆ける楽曲もあれば、Samiam のような哀愁ある歌メロの疾走感ある楽曲もあったり、JAWBREAKER のようなミドルテンポでサウンドの緩急を駆使したスルメなパンクソング等、90年代前半から流行しつつあったポップ・パンクサウンドを彼らなりに表現した純真なパンクアルバムなのだ。
Clarity の美エモ的なイメージありきで一聴すると、EMOの"E"の字もないポップパンク成分に度肝を抜かれるだろう。だがしかし、Bleed American 以降で見られるポップ・パンクやギターロック成分を鑑みると、「成程。ここからポップ・パンク成分が来てるのか」と、納得がいかないでもない不思議な印象を持つ作品でもある。
彼らのバックボーンを覗いてみると、中々興味深い。本作と次回作の Static Prevails メインボーカルだった Tom Linton は、80年代UKロックやハードコア(Gang Green をよく聞いていたとインタビューで言っていた……怖い)を好んでいたり、Clarity からメインボーカルとなった Jim Adkins は、メタルやグラム・ロックに始まり、ポスト・パンクやポップ・パンク系等々、後特筆する事としては、メンバー全員共通して、Fugazi に影響を受けていると公言している事もあり、パンク系だけに固執していたというよりは、様々なジャンルからの影響を公言している。
取り分け、この 1st Album リリース時は、メンバー全員がパンク系に傾倒していたため、ポップ・パンク成分が色濃かったのだろうと、私は考えている。前述のバックボーンや、様々なインタビューを拝見する限り、最初からポップ・パンクが好きだっからこのような作品を出したとは言えず、それまでにも様々なジャンルから影響を受けてはいたが、丁度この作品を出したときに、影響を最も受けていたのがポップ・パンクだったという方が近いかもしれない。事実、Jim Adkins は、この頃から、メタル系を避けるようになり、パンク・ハードコア系を聴くようになっていたとも、インタビューで語っている。(このバンドは元々、Metallica のコピバンから始まったのは、豆知識として押さえておきたい(白目))
作品としては、ポップ・パンクから始まったとはいえど、バックボーンを知っていると、この頃から後の作品に通じる彼らの挑戦心というのが、想像できるかもしれない。当時からジャンルに縛られず、直近で影響を受けたサウンドを、すぐ作品へ昇華させるという挑戦的なスタンスは、既に完成しているとも言えるのではないだろうか。Jimmy Eat World ファンならご存じだと思うが、彼らは、EMO バンドの代表のように呼ばれてはいるが、作品を細かく追ってみると、別に EMO に縛られず、自由に挑戦した作品達を排出し続けているバンドでもあるのだ。次回作 Static Prevails では、Sunny Day Real Estate のミドルテンポ成分や、Drive Like Jehu 等のギター・ロックとしてのポスト・ハードコア成分が加わったり、Clarity では、当時最も影響を受けたと思われる Christie Front Drive のメロウさ、Bleed American の メロディアスでストレートなポップ・パンク、アリーナロックテイストを入れた Chase This Light 等々、例を挙げるとキリがないが、EMO に留まらないバンドとして、進歩し続けているのが彼らなのだ。
その彼らが受けた影響の一過程を知る事ができる資料として、ファンならば必聴の1枚となっている。まだ有名になる前の、彼らの若さと熱量をひしひしと感じれるようなポップ・パンク良盤なので、是非聞いて頂きたい。
■個人的に好きな曲
・Patches(2曲目収録)
JAWBREAKER のBivouac をポップにしたらありそうなミドルチューン。ポップ・パンクの下地がありながら、ポスト・ハードコア的なギターアプローチも加わっており、楽曲展開も一長一短で終わらせない工夫が見える。
・Amphibious (3曲目収録)
Blink-182 や NOFX にありそうなイントロから、緩急でメリハリ付けながらも疾走感を感じさせる曲。EMOの"E"の字もないメロコアチューンとなっている(誉め言葉)
・Wednesday (7曲目収録)
このアルバムの中でも、Epi-Fat サウンド強めのポップ・パンク曲。シンガロングさせたいようなコーラスがありながらも、歌メロが弱く、結局、楽器陣のサウンドでゴリ押そうとしてる感が愛おしいスルメ曲。(白目)
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